・太陽光をプリズムに通したときに、虹色に分かれて見える光の帯のこと
北風と太陽が、力の強いのはどちらか決めようとしていました。

道の向こうから歩いてくる旅人のコートを、先に脱がせた方が勝ちね

いいよ、そんなの簡単だよ
北風は冷たく激しい風を旅人に吹き付けました。

うわ〜、さむ〜
旅人はコートの襟を押さえて、しっかりコートにくるまってしまいました。


こりゃだめだ、降参するよ

じゃあ、今度はわたしの番ね
太陽はきらきらと眩しい光をそそぎはじめました。あたりは次第にあたたかくなっていきます。でも、旅人はコートを脱ぎません。


暑くないの?

ええ、それほど暑くはありません。ところで、人間が見える波長の範囲は380nm〜780nmと知られています。その中でも、あなたはだいたい波長500nm前後の光を強く放出しているようですが?

ちょっと何言ってるのか分からないんだけど

まず、光はさまざまな波長をもちますが、人間の目で見えるのは限られた範囲の波長だけです。太陽光をプリズムに通すと、光が分散して虹色に分かれるのが見えます。この光の帯のことを、光のスペクトルと呼んでいます



あなたの表面温度は約6000度くらいですね

どうしてそんなことが分かるの?

あなたのスペクトルを解析すると、温度が約6000度の物体から放たれるスペクトルにほぼ一致していますからね

へー、すごーい

ちなみに、虹色の帯の中に見える細い暗線を調べると、太陽やこの星の大気にどんな元素が含まれているかも分かります

旅人さん、あなた何者? どこから来たの?

青白い一等星のシリウスの近くの星から、今朝、地球に着いたばかりです。ちなみに、シリウスの表面温度は約10400度ですよ

なるほど、それじゃコートを脱がないわけだよね…
光のスペクトルは、虹色に分かれて見える光の帯のこと。光が空気中からガラスに入るときには、波長の長い赤の光よりも、波長の短い紫の光の方が大きく曲がるよ。だから、プリズムを通った光はスペクトルに分かれるんだね。